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離職とメンタルヘルスの関係
目次
近年、新卒の約3割が3年以内に離職しているという統計も報告され、特に中小企業における離職率の高さが社会問題として注目を集めています。背景には、人間関係や過剰な業務量などのストレス要因があり、メンタルヘルスが大きく影響しているケースが少なくありません。
本記事では、離職とメンタルヘルスの現状や課題から、具体的な対策・メリットまでをわかりやすく解説し、組織全体の活力と従業員の健康を守るためのポイントを紹介します。
離職とメンタルヘルスの現状と課題
離職が増加する背景には、人手不足や労働条件の不備などさまざまな要因がありますが、メンタルヘルス面でのストレスが大きな引き金になることが指摘されています。特に職場でのコミュニケーション不足や過度な業務負担は、従業員の心理的負担を急激に高め、生産性やモチベーションを低下させる怖れがあります。
特に中小企業では、労働条件や福利厚生の面で大企業と差が生じやすく、モチベーションや心理支援の体制が十分でないケースも多く見受けられます。これらが複合的に影響し、結果的に離職の増加を招いています。
職場環境がメンタルヘルスに及ぼす影響
職場の人間関係が円滑に進まず孤立感を覚えると、内向的になりがちで、ストレスに対処しきれなくなる人も出てきます。さらに、残業などで業務量が極端に増えると、心身を休める時間が減少し、疲弊が重なっていくでしょう。近年では、リモートワークを導入した企業から、従業員の孤独感が増しているといった話を聞くことも増えてきました。
企業風土として相談しにくい雰囲気がある組織の場合、深刻化するまで本人も周囲も異変に気づけないことがあります。こうした負荷が積み重なり、本人にとって、退職という選択が唯一の解決策になりやすい状況が生じてしまいます。
離職を引き起こすメンタル不調のサイン
メンタル不調は突然起こるわけではなく、日々の様子や行動から前兆を捉えることが可能です。早期の段階で気づくことができれば、適切なサポートや環境整備を行うことで離職を防げる可能性が高まります。
代表的なサインとして勤怠の乱れ・休暇の増加、業務パフォーマンスの低下といった項目に注目し、多角的にチェックを行うことが大切です。
勤怠の乱れや休暇の増加
以前は遅刻や欠勤が少なかった人が急に増え始めたり、有休を頻繁に取るようになるなど、勤怠面に変化が表れる場合があります。これは疲労の蓄積や気力の低下からくる行動変容である可能性が高いので、注意が必要です。
日常業務の進捗が遅れがちになったり、急に体調不良を訴えて早退が増える場合も、メンタル面に問題が生じているかもしれません。こうした変化をいち早くチーム全体で共有し、サポートできる仕組みを用意しておくことが重要です。
業務パフォーマンスの低下と行動の変化
ミスが増える、報連相が疎かになるなどの行動変化は、メンタルに負荷がかかっているサインかもしれません。本人が自覚していてもそれを表に出すのが苦手な場合、周囲も気づきにくい面があります。
また、これまで積極的だった人が会議で発言しなくなったり、コミュニケーションを避けるようになるなど、普段と異なる様子が見られる場合にもメンタル不調をうたがうべきです。こうした早期発見こそが問題の深刻化を防ぐ重要なポイントです。
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離職を防ぐためのメンタルヘルス対策
コミュニケーションの改善と職場環境の整備
まずは、チームが協力しやすい風土をつくるために、コミュニケーションの活性化や設備面の見直しなど、働きやすい環境の基盤を整えることが重要です。企業によってはリラックススペースを社内に設置したり、ミーティングを短時間で頻度高く行うなどの工夫を行うことが成果を上げています。
業務量の見直しと時間外労働の削減
過剰な残業や急な業務量の増加は、メンタル不調を引き起こす大きな要因となります。職場全体でタスクを分担し、定期的に業務量を見直すことで従業員の負担を軽減することが大切です。
定時退社日を設ける、業務の効率化を図るためのITツールを導入するなどの方法を取り入れることで、従業員のストレスを軽減するだけでなく、結果的に業務の質とスピードを向上させることにつながります。
相談しやすい環境とハラスメント防止
メンタルヘルス不調を感じ始めても、上司や同僚に相談しづらいと問題は深刻化しやすくなります。相談体制を整えるためには、日常的に従業員がお互いに気遣えるコミュニケーション文化をつくることが欠かせません。
また、ハラスメント防止となるルールやガイドラインを明確化し、違反があった際の対応を徹底することで安心感を育みます。従業員が安心して働ける組織基盤こそが、メンタルヘルスケアを機能させる大前提となります。
柔軟な働き方の導入
リモートワークやフレックスタイム制など、多様な働き方を認めることは従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた負担軽減に有効です。実際に柔軟な働き方を導入した企業では、従業員のワークライフバランスが改善し、離職率の低下につながった例があります。ただし、リモートワークについては孤独感の増加を防ぐために、今までとは異なるマネジメントが必要になることもあります。
特に育児や介護などの負担を抱える従業員にとって、時間や場所に融通を利かせられる環境は大きな助けとなります。従業員にとっては働きやすく、企業にとっては人材の定着に貢献する施策として注目されています。
管理職やリーダー層への研修とサポート
リーダー層がメンタルヘルスに関する基礎知識を習得することで、部下の異変に気づきやすくなります。研修プログラムでは、ストレスチェックの解釈や傾聴の技術、部下への声かけ方法などが注目されています。
また、管理職自身がメンタル面のケアを受けられる体制を作ることも必要です。リーダーが自分のコンディションを良好に保てなければ、部下のケアまで十分に行えない可能性があるからです。
1on1ミーティングによる従業員との対話強化
定期的な1対1のミーティングを実施することは、従業員の気持ちを把握し早期に問題を解決するための有効な手段です。短時間でも個別に話す機会を増やすことで、日頃は言えないような悩みも打ち明けやすくなります。
また、単に業務報告だけでなく、将来のキャリアやプライベートの状況など、相手に寄り添った対話を心がけることが大切です。こうしたミーティングが定着すれば、離職リスクを含めた問題の早期発見につながります。
コーチングスキルを持つ管理職の育成
コーチングスキルを習得した管理職は、部下の潜在能力を引き出し、業務上の課題解決をサポートするだけでなく、メンタル面のフォローアップも上手に行うことができます。単なる指示とは異なり、双方向のコミュニケーションが多いのが特徴です。
結果として、部下のモチベーションや自己肯定感を高めることにつながり、離職を防止する効果が期待できます。管理職へのコーチング研修や継続的な支援体制を整えることが、組織の安定と成長に直結します。
公平で透明性のある人事評価制度の導入
評価制度が不透明だと、従業員は自身のキャリアや昇進に対して不安を抱えやすくなり、結果としてストレスやモチベーション低下の原因となる場合があります。納得感の高い評価制度を構築することで不公平感を解消し、従業員の成長意欲を引き出すことが可能です。
特にメンタルヘルス対策を行う企業では、定期的に評価基準を見直し、日頃の業務や取り組みを正しく反映させる工夫を行っているケースが多く見られます。こうした取り組みが、離職率の抑制と従業員の満足度向上に大きく貢献するのです。
ストレスチェック制度の活用
ストレスチェック制度は、厚生労働省が推奨するメンタルヘルスケアの基本施策の一つであり、従業員が自身のストレス状態を客観的に把握するのに有効です。結果を踏まえて、必要に応じた面談やフォローアップ体制を整えることで早期対応が可能になります。
カウンセリングや心理相談サービスの提供
専門のカウンセラーや産業医などが常駐、もしくは定期的に訪問するシステムを導入する企業が増えています。プロの視点を取り入れることで、従業員が抱える問題を適切に把握・解決できる可能性が高まります。
外部の第三者のサポートを得ることで、職場内部では話しづらい悩みも打ち明けやすくなる利点があります。従業員の心の負担を軽減する環境を整えることが、長期的な人材定着に大きく寄与します。
セルフケア教育とストレスマネジメントの推奨
従業員自身がストレス状態や不調の兆候を早期に把握できるように、セルフケアやストレスマネジメントの研修を行うことは非常に効果的です。具体的には、リラクセーション法やタイムマネジメント術を身につけることで、負担を軽減しやすくなります。
多忙な業務に追われる中でも、自らの心身のケアを意識できる社員が増えれば、結果的に離職率を下げることにつながります。企業全体でこの取り組みをサポートすることで、より健康的な企業文化を築くことができます。
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離職問題を放置することによるリスク
メンタル不調離職による採用・教育コストの増加
慢性的に社員が辞める状況が続くと、企業は常に新しい人材の採用と教育を繰り返す必要があります。そのたびに採用広告費や研修費、育成期間の人材リソースといったコストがかさんでいきます。
また、新人が定着しない状況は組織風土にも悪影響を与え、負の連鎖を起こしてしまうこともあります。こうしたコストとリスクを考えると、早期にメンタルヘルス対策を行うことは企業にとって不可欠と言えるでしょう。
既存社員の働き方や企業イメージへの悪影響
離職が多い組織では、残された社員の仕事量が増えがちになり、さらにメンタル不調を加速させる恐れがあります。結果として、既存社員まで離職を検討するスパイラルに陥り、採用だけでなく企業活動そのものに支障をきたすこともあります。
さらに、外部からは「職場環境が悪いのではないか」という印象を持たれ、企業イメージが損なわれる可能性も高まります。こうした影響は長期的に響くため、予防的なケアがいかに重要であるかが分かります。
離職率の高さは、企業が抱える大きなコスト面やイメージ面のリスクだけでなく、現場で働く従業員のモチベーションや負担にも直結します。そのため、早期離職を防ぐためには、メンタルヘルスケアを全社レベルで推進することが重要です。