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健康経営

3分で読める!人事お悩み相談室~「健康経営を推進する苦労は、報われるのでしょうか」

健康資源とは

これから健康経営を始める企業のために.jpg

健康経営度調査を提出された企業に対して、フィードバックシートが年末に送られてきています。
今年度の偏差値・順位はいかがでしたでしょうか?年々申請社数が増えていますし、各社のレベルも高くなっていますので、良い順位をキープするのがとても大変になっていますね。

「こんなに頑張って毎年申請しているけれど、この苦労は本当に報われるのだろうか・・・」
「認定されたり、順位を上げることに、本当に意味はあるのだろうか・・・」

そんな思いがフッとよぎることがある人事の皆様に、

「POS:Perceived Organizational Support」についてご紹介したいと思います。
「POS」は、「知覚された組織的支援」と訳されています。

健康投資管理会計ガイドラインでは、健康投資の効果として組織に蓄積されるものを「健康資源」と呼んでいます。

この「健康資源」には「人的健康資源」と「環境健康資源」があります。「人的健康資源」とは、健康な従業員そのものです。「環境健康資源」とは、設備や備品などの「有形資源」と財務会計上は資産として扱われない「無形資源」があります。

「無形資源」の具体例としては、健康経営度調査でも聞かれることですが、

  • 健康経営の全社方針や理念
  • 健康経営に対する経営のコミットメント
  • 具体的な制度、施策、体制
  • 上記により培われてきた組織風土(健康風土・健康文化)

などが挙げられます。

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「健康風土・健康文化」を評価する指標「POS」

この「健康風土・健康文化」を評価する指標が「POS」です。

「POS」は、1986年にEisenberger, Huntington, Hutchison, Sowaによって提唱された概念で、「従業員の貢献を組織がどの程度評価しているのか、従業員のwell-beingに対して組織がどの程度配慮しているのかに関して、従業員が抱く全般的な信念(Eisenberger et al. 1986)」と定義されています。

頑張ったら組織はちゃんと評価してくれるのか、私の健康について組織はちゃんと配慮してくれるのか、その2つについての、従業員の実感が「POS」だといえます。

企業は従業員に対して色々と投資をしますが、その投資の度合いや内容に対する「従業員からの評価」の視点なのです。理論的には「社会的交換理論(人間は有形無形の様々な“報酬”の交換によって人間関係を形成・発展していく)」を基礎としていて、組織からの支援を従業員が感じれば感じるほど、従業員は組織に対する好意を強め、組織の目標達成のために貢献しようと更なる努力をする、という考え方がベースにあります。

「会社がこんなに支援してくれるのだから、私も頑張らなくちゃ!」と思うだろう、ということですね。

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健康経営は、社員の健康増進と企業の持続的成長を両立させる経営手法です。健康経営は単なる福利厚生ではなく、企業の戦略的な取組みとして位置づけられます。

POSの測定方法

自社のPOSを測りたい場合、Eisenbergerらによって開発されたPOSを測定するサーベイがあります。36項目の質問ですが、16項目や8項目の短縮版もあるそうです。例えば、以下のような質問に対して7択で回答します。

  • 「私が所属する組織は、私のウェルビーイングを本当に大切にしてくれる」
  • 「私が所属する組織は、私が全般的に仕事に満足しているか、気にかけてくれる」

それでは、POSの数値が高いとどのような効果があるのでしょうか。POSの高さが影響するアウトカム(研究結果の一例)としては、

・努力-報酬の不均衡のよる離職意思を軽減する
・疲労、燃え尽き、不安、頭痛を軽減する
・職場でのストレスが少なく、腰痛による休業後も職場に早く復帰する傾向がある
・業績に正の相関がある
・業務改善のために、より創造的な提案をする

などがあります。そんな良い効果があるなら、ぜひPOSを上げていきたい!と思われますよね。どのような投資をすればPOSが上がるのか、ということに関しては、もちろん様々な因子があるのですが、特に重要なのは、「上司による支援」だと思っています。

なぜなら、従業員は上司のことを無意識に「組織の代理人」とみなすからです。上司から受けた待遇を組織に帰属させるのです。

上司から何かひどいことをされると「もうこんな会社嫌だ!!」と思うものなのです。上司の存在は、どんなときにもキーになります。

また、注意点も示されていてどんなに組織が従業員に良い投資をしても、それが組織が自発的に、組織の裁量で行った・・・と思われないと、効果がないというのです。つまり、健康経営を一生懸命に推進していても、声高に健康経営宣言を発表しても、

「どうせ、ホワイト500がとりたいからでしょ」
「医療費を削減したいだけでしょ」
「競合他社もやっているから仕方なくでしょ」
・・・などと思われては、

POSは上がらない、ということです。なかなか難しいものですね。

自分の仕事について褒められたり、表彰されたりしても、それが組織の「誠実さ」からなされていると思われなければ、やはりPOSは上がらないといいます。具体的な成果を認められて、それが報酬と連動するなど「心からなされたものだ」と従業員側が認識して初めて、称賛や表彰に意味が出てくるのです。

今回お伝えしたいのは「従業員に真に伝われば、報われる」ということです。

健康経営に限らず、人事の皆様は従業員のことを思い、様々な人事施策を企画・実行し、従業員に投資されていることと思います。それが、企業にとって良い成果として現れるかどうかは、その投資を従業員がどう実感しているかにかかっているのです。

様々な施策は、ただ実施するだけでなく、どうしてこれを実施するのか、どんな思いで実施するのか、従業員の皆さんにどうなってほしいのか、そういったメッセージとともに実施されることが重要だと思います。

次回は、POSを高める対策について、もう少し詳しくお伝えできればと思います。