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ストレスチェック制度と産業医に期待される役割
目次
従業員のメンタルヘルス管理に悩む、人事や総務担当者の方は多いのではないでしょうか。労働安全衛生法で定められたストレスチェック制度を適正に実施するためには、産業医との適切な連携が不可欠です。本記事では、ストレスチェック制度の解説と共に、産業医に期待される役割について解説します。企業が従業員の心身の健康を守るための具体的なポイントを解説します。法令遵守と職場環境改善の両立に向けた知識を得たうえで、産業医と連携し、ストレスチェックを行いましょう。
ストレスチェック実施の流れ
従業員へのストレスチェック調査票の配布・集計から、結果通知、高ストレス者への面接指導、職場環境の改善計画の立案まで、ストレスチェックの実施には必要な手順があります。ここでは、一連の流れを詳しく解説します。
ストレスチェックを実施
企業は、実施計画の立案から具体的な準備まで、幅広い業務を担当しなければなりません。また、労働安全衛生法により、企業は高ストレスと判断された従業員に対して、面接指導を実施することが義務付けられています。ストレスチェック制度における実施者(産業医が担うケースが望ましい)は、ストレスチェック実施後、回答内容から個々の心身のストレス反応を確認し、高ストレス者に対する面接指導の必要性を判断します。
一方で企業は、集団ごとのストレス状況を分析し、組織の状態を評価します。
ストレスチェックの実施については、以下の流れで行います。
1.従業員全員に調査票を配布・配信
2.ストレスチェックの実施と回収
3.従業員に結果を通知
4.高ストレス者に対しての医師面接と就業上の措置
調査票は、職業性ストレス簡易調査票を使用するのが一般的です。以下の3つの領域について測定します。
仕事のストレス要因(17項目) |
仕事の量や質、職場の人間関係など |
心身のストレス反応(29項目) |
疲労感やイライラ、不安感など |
修飾要因(11項目) |
上司や同僚からの支援状況など |
一般的には、実施事務従事者が回収し、集計・分析した調査票から、高ストレス者の判定を行います。企業は、従業員が落ち着いて回答できる環境を整えることや、勤務時間内に面談を実施できるようにするなどの配慮をすることが大切です。
従業員への結果通知と面接指導
ストレスチェックの結果は、個人情報の保護に配慮しながら、従業員一人ひとりに直接通知することが重要です。また、高ストレス者と判定された従業員には、医師による面接指導を受けられることをあわせて通知します。面接指導では、医師が従業員の心身の状況や就業環境について確認します。企業は医師からの意見を聴取し、必要に応じて就業時間の短縮や配置転換などの具体的な措置を行うことが求められます。
面接指導を行う医師は、会社の状況を理解した者が行うことが望ましく、自社の産業医が日ごろから社内の健康づくりに関わっている場合は、産業医にその役割を担うことが期待されます。
職場環境の改善を行う
一般的に実施事務従事者(もしくは外部の専門事業者)が、ストレスチェックの集計・分析結果を行い、その結果をもとに、企業は職場環境の改善措置を図ります。企業は、部署ごとの分析結果から職場のストレス要因を特定します。具体的な職場環境の改善として、以下の案が考えられます。
・テレワークやフレックスタイムの導入
・社員に適切な仕事を割り振る
・適切な休暇制度の取得
・チーム内の情報共有ツールの導入
・健康保持につながるサポートや福利厚生の見直し
実施後は、企業は定期的に効果測定を行います。従業員アンケートや面談、次回のストレスチェック結果などから客観的に評価することが大切です。
産業医に求められる役割
ストレスチェック制度において、産業医は「実施者」の役割を担うことが望ましいとされています。また、衛生委員会に出席し意見を述べたり、ストレスチェック結果において「高ストレス」とされ、医師面接を希望した従業員に対し、会社の状況を理解した立場として産業医が面接指導にあたることも、望ましいとされています。
しかし、すべての産業医がストレスチェックについて熟知しているわけではありません。これから産業医を探す企業は、ストレスチェック制度や役割を理解していることも重視するべきポイントです。企業が選任している産業医が、ストレスチェックへの理解があるかどうか確認をしましょう。
ストレスチェック制度を活用するメリット
ストレスチェックは、一人ひとりの心理的負担が数値化され、客観的な指標で不調を早期発見できる制度です。うまく活用することでいろいろなメリットがあります。
・メンタルヘルス不調の予防と早期発見
・従業員の健康保持とモチベーション向上
・職場環境改善の促進
・生産性向上と企業イメージ向上
定期的な実施は、従業員の健康意識向上にもつながります。自身のストレス状態を客観的に認識することで、セルフケアの促進も期待できるでしょう。
適切なストレスチェックを行わないリスク
ストレスチェックを適切に実施しないことは、企業にとって深刻な影響をもたらす可能性があります。法令遵守の観点や従業員の健康管理の面から、以下のリスクが想定されるでしょう。
・従業員のメンタルヘルス不調の悪化
・休職・退職者の増加
・企業イメージの低下
とくに従業員50人以上の事業場では、年1回以上のストレスチェック実施が義務付けられています。実施を怠ると、労働基準監督署からの是正勧告やペナルティを受ける可能性があります。
ストレスチェックを行ううえでの注意点
ストレスチェックの実施にあたり、面接指導の強制はできず、従業員からの申し出が前提となります。また、高ストレス者への面接指導は申し出から1カ月以内に実施し、必要な事後措置を講じる必要があります。これらを含めて、ストレスチェックを実施するうえでの注意点を詳しく見ていきましょう。
面接指導は強制できない
ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員に対する面接指導は、従業員本人からの申し出が前提です。事業者や医師が、強制的に面接指導を実施することはできません。
1カ月以内に面接指導と必要な事後措置を取る
高ストレス者として判定された従業員から面接指導の申し出があった場合、事業者は法令により1カ月以内に医師による面接指導を実施する必要があります。また、面接指導の結果を踏まえ、医師は事業者に対して就業上の措置に関する意見を提出します。企業と医師で連携しながら改善状況を定期的に確認し、必要に応じて追加の対応を検討します。
面接指導の記録は5年間保存する
面接指導の記録は、労働安全衛生規則に基づき5年間の保存が事業者に義務付けられています。保存が必要な記録には、以下の項目が含まれます。
・面接指導の実施年月日
・従業員の氏名と所属部署
・心身の状況や就業上の措置の必要性
・指導内容と事後措置の内容
・面接を実施した医師の所見
機密性の高い個人情報となるため、厳重な管理体制が必須です。
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