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メンタルヘルス

ストレスコーピングとストレス耐性の関係

ストレスとは

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外部からの刺激によって、身体に生じた反応を意味しています。もともと物理学の分野で使われていたもので、外部からの刺激に対する力をさしていました。アメリカの生物学者ウォルター・B・キャノンが生理学に応用し、カナダの医学者のハンス・セリエがさらに研究を進めて「ストレス学説」を唱えたのが、今の「ストレス」の始まりといわれています。

ストレス反応

ストレス反応は、長時間ストレッサーの刺激を受けた場合や、強いストレッサーを受けた際に生じる生体反応で、ストレッサーに対する生体の自然な適応反応と考えられています。ストレッサーに対する個人のストレス耐性、ストレス反応として現れる症状は個人差があります。生活環境ストレッサーや心理的ストレッサーが複合して影響を与えることもありますので、同じ状況にあっても、全ての人が同じ症状や反応を示すわけではないことには留意しておきましょう。
人間のストレス反応は、心理面・身体面・行動面の3つに分類されます。

①心理面のストレス反応:不安感、気分の落ち込み、イライラ、意欲の低下など
②体面のストレス反応:不眠、頭痛、肩こり、腹痛、食欲低下など
③行動面のストレス反応:仕事でのミスの増加、飲酒・喫煙量の増加、など

それぞれのストレス反応は、「ストレッサー」と呼ばれるストレス要因を人間が認知し、体内で解消しようとする防御反応として機能します。ストレッサーによって過剰なストレスが慢性的にかかると、上記のようにさまざまな悪影響が心身にあらわれます。

ストレス耐性

ストレスに耐えられる力のことです。ストレスとなる出来事に対してどう感じ、対処する力を持っているかの目安となります。

ストレス耐性は、下記の6つで決まると言われています。
①容量
②処理能力
③感知能力
④経験
⑤回避能力
⑥転換

①容量
ストレスを受け止められる精神的なキャパシティを指します。ストレス容量が小さいと、心身に問題が発生します。反対に、容量が大きいと、ストレス反応が出にくいです。人によってその大きさはさまざまです。

②処理能力
ストレスを処理する能力のことです。ストレスになる出来事に遭遇したとき、どのように対応できるかの行動の差を指します。ストレッサー(ストレスの原因)に臨機応変に解決できる人はストレスに強いと考えられます。

③感知能力
感知能力とはストレスになり得ることに気付くかどうかの能力ことです。ストレスになり得ることに気づかなければ、ストレスを感じることがないとされています。

④経験
経験とは、これまでどのくらいのストレスを経験したかを指します。何度も同じようなストレッサーに合うと、そのストレッサーに慣れてきて、徐々にストレスを感じにくくなります。

⑤回避能力
回避能力とは、ストレスを作りやすい性格かどうかの能力です。理不尽なことでも仕事だからと割り切れる人はストレス耐性が高いと考えられます。 

⑥転換能力
転換能力とは、ストレスの根本的な意味を考え、それをポジティブに捉え直すことができる能力を指します。失敗をしても「うまくいかなかったが、自分にとっては貴重な学びだった」と前向きな思考を持てる人はストレス耐性が高いと言えます。

ストレス耐性が低い人の特徴

ストレス耐性が低い人は、ストレスに弱い傾向があります。ストレス耐性が低い人は、考え方がネガティブで、嫌なことがあると、簡単に受け流せず、気持ちを切り替えることが難しいです。周囲に合わせすぎてしまうため自分のペースを乱されることも多いです。ストレス耐性が低い人の特徴には、次のようなものがあります
・几帳面で完璧主義
・細かいことを気にしすぎる
・悩みを引きずる
・気持ちの切り替えが難しい
・周囲に合わせすぎる

ストレス耐性が高い人の特徴

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ストレス耐性が高い人は、ストレスに強い傾向があります。
ストレス耐性が高い人は、ポジティブな考え方が習慣化しており、嫌なことがあっても適度に受け流せるため、気持ちを切り替えて行動できます。また、自分のペースで物事を進められるため、集中力を継続することもできます。
ストレス耐性が高い人の特徴、次のようなものがあります。
・前向きに捉えられる
・ポジティブ思考で物事に取り組める
・嫌なことを長く引きずらない
・自分のペースで物事を進められる
・失敗しても「良い経験をした」と思える

ストレス耐性を高める方法

・ストレッサーを確認する
ストレッサーを認識することは、ストレス耐性を高めるために重要です。ストレッサーを正確に認識することで、ストレスの根本原因を特定し、適切な対処法を見つけ出せます。
ストレッサーを認識する方法は、自分自身を振り返り、日常生活で感じる不快感や緊張の原因を洗い出すことから始まります。それらが何に由来するのかを具体的に特定していくことで、ストレスの根本原因を明らかにできるでしょう。ストレスになりやすいことを知り、ストレスを感じるとどのような反応をする傾向があるか分かると、物事の見方を変えてストレスを抱える前に流せるようになるでしょう。

・ABC理論
ABC理論とは、臨床心理学者のアルバート・エリスが1955年に提唱した論理療法の中心概念で、人間が物事を解釈する過程を説明する心理学的な理論です。アルバート・エリスは、「A(出来事)そのものが、C(心理的な結果)に結び付く」という考えを否定して、「A(出来事)が起きて、それをB(認知)して、結果的にC(心理的な結果)に結び付く」としました。

「起きた出来事自体(A)は一緒でも、それをどう捉えるか(B)によって、結果(C)は変わってくる」としたのです。

ストレスの原因となる考え方を、より建設的な考え方に変えることで、感情や行動を改善できます。ストレスに感じる出来事があっても、考え方を変えることで感情をコントロールし、ストレスを軽減することができます。

・リフレッシュする方法をストックする
ストレス耐性が強い人でも、ストレスが蓄積され続けると心身に不調をきたす恐れがあります。ストレスが蓄積されないよう、ストレスを感じたら解消することが大切です。
(リフレッシュ方法例)
・食事やお酒を楽しむ
・入浴する
・買い物をする
・旅行をする
・深呼吸をして呼吸を整える
・好きな音楽を聴く
・料理を作る
・マッサージをしてもらう
・ストレスを認知したら行動する

ストレスがあると分かった瞬間に気分転換をするなども効果的です。ストレスを強く感じたときは、おいしいものを食べる、旅行に行く、推しのライブに行く、かわいい動物の動画を見るなど自分の好きなことをするのが効果的です。

ストレッサー

ストレス反応を起こす外部環境からの刺激をストレッサーと呼びます。
ストレッサーは、以下4種類に分類されます。
①物理的ストレッサー(寒冷、騒音等)
②化学的ストレッサー(酸素、薬物等)
③生物的ストレッサー(炎症、感染等)
④心理的社会的ストレッサー(人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任、将来に対する不安等)

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ストレスコーピングとは

ストレスコーピングとは、ストレスにうまく対処するための行動のことを指します。
コーピングは「上手く対処する」という意味の英単語「cope(コープ)」が由来です。

・R・S・ラザルスのストレス理論
ストレスコーピング理論の基礎となっているのが、アメリカの心理学者RS・ラザルスのストレス理論です。ラザルスは、人間がストレスを感じる時の反応に対して、ストレスを与える要因であるストレッサーの大きさを一次的認知評価、ストレスを二次的認知評価という2段階で認知すると提唱しました。
一次的認知評価は、出来事で刺激を受けた際、が自分にとって「無関係」か、「無害―肯定的」か、「ストレスフル」かの判断をする段階です。たとえば、上司に叱責された際「ありがたい指導」と感じられる人もいれば、「パワハラ」と解釈する人もいます。
二次的認知評価は、「ストレスフル」と判断した刺激に対して、どう対処するべきかを判断する段階です。本人が持つコーピングの幅の広さや行動の選択傾向によって解決できるかどうかが変化します。この結果によって再度コーピングの成果が評価されます。
失敗すればストレス反応が強まります。解決すれば、成功体験として次回の刺激への評価に活かされます。

ストレスコーピングが注目される背景

ストレスコーピングが注目される背景には、ストレスを抱えながら働く人が増加していることが挙げられます。厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスを感じている労働者の割合は82.7%でストレスを抱えた状態で仕事をしている人が大部分を占めていることが分かります。

 

ストレスコーピングの方法

ストレスコーピングは以下5つの種類に分けられます。

①問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングは、ストレスになっている問題そのものに働きかけて解決を試みる方法です。
(問題焦点型コーピングの例)
・対人関係でストレスがある場合、相手に対して直接謝罪をして関係を取り戻そうとする
・人前で話すことが苦手だが、「弱点を克服するチャンス」という考え方に修正する
・作業量が多い場合、上司に相談して調整してもらう
・仕事が自分にあわないときは、担当業務の変更をお願いする

②情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングは、ストレスの原因となっている問題そのものに着目するのではなく、ストレスに対する考え方や感じ方を変えることで、ストレスに対処する方法です。
(情動焦点型コーピングの例)
・仕事で失敗してしまって落ち込んだ際に、同僚や親しい友人に話を聞いてもらい、別の角度からの視点に気付かせてもらう
・瞑想や深呼吸、ヨガなどを行い心身をリラックスさせる
・読書、映画鑑賞、料理、ガーデニングなど自分が楽しめることに没頭する
・友人や家族と話すことで、感情を共有し、理解を得る
・旅行に行き日常から離れ、落ち着く時間をつくる

③認知的再評価型コーピング
認知的再評価型コーピングは、ストレスを軽減するために、ストレッサーを前向きに捉える方法です。
(認知的再評価型コーピングの例)
・責任が重い仕事を任されたとき、「失敗ができない」「自分の能力では全うできない」と思うのではなく「会社から期待されている」と考え方を変える
・上司に叱責された際、嫌われたと考えずに成長を期待されていると考える。

④社会支援探索型コーピング
社会支援探索型コーピングは、問題焦点型コーピングの一種で、周囲にアドバイスや協力を求める方法です。
(社会支援探索型コーピングの例)
・ハラスメントを受けてストレスを抱えた際に、同僚に相談する
・職場の人間関係に悩んでいる際、信頼できる友人に相談する
・難易度が高い業務について、上司にアドバイスをもらいにいく
・業務量が多すぎる際、同僚にサポートしてもらう

⑤気晴らし型コーピング
気晴らし型コーピングは、ストレスを感じた時に、ストレッサーから物理的に距離を取ったり、ほかのことをして鬱々とした気分を発散したりして緩和を図る方法です。
(気晴らし型コーピングの例)
・ジョギングやジムでトレーニングなどで身体を動かす
・友人と食事やカフェに行き、楽しい時間を過ごす
・散歩やハイキングをして、自然の中でリフレッシュする

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企業でのストレスコーピング方法

ストレスコーピングの多くは個人が自分自身に対して行うものですが、企業が従業員に対して、できることを5点ご紹介します。

①1on1
1on1とは、上司と部下が11で行う面談のことです。1on1は評価や指導の実施だけでなく、上司と部下が対等にコミュニケーションを取れる場でもあります。部下は感情や問題を整理でき、ストレスの軽減につなげることができます。

②社内研修
ストレスへの対処法を学ぶセルフケア研修、ラインケア研修、パワーハラスメント研修、セクシャルハラスメント研修、などの社内研修の実施も方法の一つです。定期的に社内研修を実施することで、ストレスの対処法を確認することができます。

③ストレスチェック
ストレスチェックは、従業員のストレスの状況について定期的に検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、従業員がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです。
201212月から一定規模の事業場で義務化されました。

ストレスチェックを実施することで、企業は従業員のストレスの状況を把握し、メンタルヘルス不調のリスクが高い従業員には面談やカウンセリングなどの、ストレスコーピングの機会を提供することができます。

④カウンセリング
専門家からストレスとの付き合い方を学べます。また、相談者自身がストレスについての理解を深める機会にもなります。従業員がカウンセリングを受け、ストレスコーピングの知識を得て実践することで、生産性向上・職場環境改善が期待できます。

⑤メンター制度
メンター制度は、主に新入社員や中途社員など社歴の浅い社員(メンティー)に対し、相談相手としての先輩社員(メンター)をつけ、メンティーの業務上の悩み・相談から精神的なサポートまでをおこなう制度です。とくに社歴の浅い社員は、慣れない職場環境や新しい業務などに対してストレスを感じやすいと考えられています。気軽に相談できるメンターがいることで、悩みをそのままにせず対処することができます。