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エンゲージメント|職場環境改善

3分で読める!人事お悩み相談室~「ワーク・エンゲージメントってどうやって上げるのですか?①」~

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健康経営の最終アウトカムとして設定されていることも多い
ワーク・エンゲージメントですが、どうしたら数値がよくなるのか・・・そんなお悩みは人事の皆さまからよく聞くところです。
同じく最終アウトカムであるプレゼンティーイズムやアブセンティーイズムは、ある意味わかりやすいですよね。心身の健康状態がよくなれば、自然と改善する数値です。一方ワーク・エンゲージメントは、それだけではないような気がする・・・でも、何を改善すれば数値がよくなるのか、いまいちピンと来ない・・・そういう指標なのではないでしょうか。そこで本コラムでは、このワーク・エンゲージメントという指標について、何回かに分けて、深掘りしてみようと思います。

ワーク・エンゲージメントの概念

すでにワーク・エンゲージメントについて勉強されている方には復習的な内容になってしまうかと思いますが、まずはワーク・エンゲージメントの概念について整理しておきましょう。ユトレヒト大学のSchaufeli教授は、「ワーク・エンゲージメント」を以下のように定義づけています。

◆ワーク・エンゲージメント
仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、
活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である。

※この概念に基づいて開発されたサーベイが、 今現在、最も広く活用されている「ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度(Utrecht Work Engagement Scale)」ですね。「活力・熱意・没頭」の3要素がワーク・エンゲージメントの特徴とのこと。

◆活力
仕事中、高い水準のエネルギーが保持されていて、心理的な回復力があり、仕事に費やす努力をいとわず、困難な状況に直面した時にも、粘り強く積極的に解決に取り組める状態。一言で言うと「イキイキ!」している状態です。

◆熱意
仕事に意味を見出し、熱中し、誇りを持ち、挑戦しようという意欲を感じている状態。仕事にやりがいを感じており、積極的に取り組もうという気持ちが強い状態です。仕事に対しての努力を継続することができ、新たな知識をインプットしたり、良いアイデアを出したり、仕事に工夫をしようという気持ちがあります。

◆没頭
仕事にのめり込んでいる時の幸福感があり、時間があっという間に過ぎる感覚があります。仕事から頭を切り離すのが難しい感覚もあります。没頭している状態では仕事の効率がアップし、業務の品質や速度の向上、人為的なミスの削減にもつながると言われています。ポジティブ心理学のCsikszentmihalyiが提唱した「フロー」という概念は、「取り組んでいる活動に完全にのめり込んだ没頭状態を指し、心と体が一体化して、時間も忘れて内発的な喜びが得られることを特徴とする状態」ですので、フローの概念に近い状態だと思います。

また、ワーク・エンゲージメントは、「バーンアウト(燃え尽き)」の対局の概念とされています。「バーンアウト(燃え尽き)」とは、「仕事に対して過度のエネルギーを費やした結果、疲弊的に抑うつ状態に至り、仕事への興味・関心や自信を低下させた状態」と定義されています。「仕事への態度・認知」については否定的な状態になってしまっており、「活動水準」が低い状態です。つまり、「仕事への態度・認知」について肯定的で、「活動水準」が高い状態なのが、ワーク・エンゲージメントですね。

ちなみに、「仕事への態度・認知」は肯定的だけれども、「活動水準」は低い状態の場合、これは「職務満足感」にあたります。
※「職務満足感」・・・Lockeにおいて「自分の仕事を評価してみた結果として生じる、ポジティブな情動状態」とされる。

また、「仕事への態度・認知」は否定的だけれども、「活動水準」は高い状態の場合、これは「ワーカホリズム」にあたります。
※「ワーカホリズム」・・・Schaufeli, Shimazu, & Tarisにおいて「過度に一生懸命に強迫的に働く傾向」とされる。

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ワーク・モチベーション

さらに、ワーク・エンゲージメントに似た概念として、「ワーク・モチベーション」があります。「ワーク・モチベーション」とは、Mitchellによると、
「目標に向けて行動を方向づけ、活性化し、そして維持する心理的プロセス」と定義されています。産業・組織心理学会の定義では、「組織や仕事に関連した目標に向かい高い水準で努力することの意思や心理的プロセスであり、それにより働く人が何らかの欲求を満たそうとすること」とされています。

ワーク・エンゲージメントとワーク・モチベーションの違い

ワーク・エンゲージメントとワーク・モチベーションの差異を考えてみました。

ワーク・モチベーションは「心理的プロセス」なので、動的な感じがします。自分のこととして考えても、ワーク・モチベーションは、高いときもあれば、低いときもあり、流動的です。例えば上司からの何気ない一言で、簡単に上がったり下がったりするものです。「目標に向けて」という部分がキーワードで、具体的な目標とその達成に向けた心理的な高まりと言えそうです。

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今回は前回に引き続き、ワーク・エンゲージメントがテーマです。前回は、ワーク・エンゲージメントの概念や、他の類似概念との違いを見てみました。今回は、「どうしたらワーク・エンゲージメントが上がるの?」ということを考察していきたいと思います。

ワーク・エンゲージメント

一方、ワーク・エンゲージメントは、仕事内容や環境が大きく変わらない限り、ある程度、継続・持続した状態を指していると思われます。そのため、ワーク・エンゲージメントは、ワーク・モチベーションが高い状態をたくさん作りだすための良質な土台、とも言えますし、ワーク・モチベーション高く働いた結果として、仕事に対する感情や認知が肯定的に維持されている状態、とも言えると思います。

また、ワーク・エンゲージメントは、「従業員エンゲージメント(Employee Engagement)」という概念と混乱されがちです。「従業員エンゲージメント」は米国ギャラップ社によって使用されるようになり、有名になった概念だと思います。もともとはアメリカの心理学者フランク・L・シュミット博士が使い始めた言葉ですが、
シュミット博士とギャラップ社が共同開発したのが、「Q12(キュートゥエルブ)」という従業員エンゲージメントサーベイです。「Q12(キュートゥエルブ)」の設問内容を見ると、従業員エンゲージメントとは、従業員が、組織、上司、同僚などの仕事の資源をどの程度知覚しているかといった指標から、会社への積極的な関与や愛着、信頼感を測るものだと言えます。

さて、今回は、類似概念も見てみることで、ワーク・エンゲージメントの概念を整理してみました。
次回は、肝心の「どうしたらワーク・エンゲージメントが上がるの?」ということを考察していきたいと思います。

------------☆筆者プロフィール☆------------
桜又 彩子(さくらまた あやこ)

SOMPOヘルスサポート株式会社
シニアゼネラルコンサルタント

システム開発会社の人事部で7年間勤務の後、
2007年よりSOMPOヘルスサポートにてメンタルヘルスおよび健康経営の

コンサルティング業務、研修講師などに従事。

【保有資格】
特定社会保険労務士 
キャリアコンサルタント
シニア産業カウンセラー
ポジティブ心理学プラクティショナー
健康管理士一般指導員  など